Time is gone



「光彦、結果はどうじゃった!」
 玄関の扉を開くなり、祖父は飛び出してきた。祖母は持病の検診のために、病院に行っていた。
「取り合えず、上がっていいかな?」
 僕は急かす祖父に対し、笑顔で答えた。
「その顔じゃと、受かったんじゃな? そうじゃろ?」
 居間に入るなり、祖父は興奮した面持ちで繰り返しそう尋ねて来た。僕はそんな祖父を尻目に、鞄からあるものを取り出した。
「ねぇっ、じいっちゃん、この時計、覚えてる?」
 僕は、祖父の目の前に時計をかざした。祖父は少し考え、口を開いた。
「あぁっ、確か去年か一昨年、お前が釣り上げた時計じゃろ? それがいまさらどうしたんじゃ?  それより、受かったんじゃな」
 祖父は満足そうに笑みを浮かべていた。
「この時計ね、すごいんだよ。すごい力があるんだ。じいちゃんなら、僕が今から言うことを信じてくれるよね?」
 祖父は眉を寄せたが、笑顔は崩れていなかった。そして深く頷いてくれた。それを確かめ、僕は口を開いた。僕の言うことを信じてくれるのは、祖父だけだ。