夏が終わり、秋が過ぎ、冬が来た。アッと言う間に一年が過ぎ、センター試験を迎えた。努力の甲斐もあり、それは難なく突破することができた。そして訪れた本番当日。僕は自信に満ちていた。それを裏付ける努力をし、模試の結果もそれを揺るがすことはなかった。合格率七十パーセント。安心できる数値ではなくとも、不安に思うほどでもない。
試験会場までは自らの力で向かった。光速に進めた時を取り戻すように、一歩一歩を踏みしめ。
一歩足を踏み出す度に、一日一日が鮮明に蘇った。それは僕にさらなる自信と勇気を与えた。できることは全てやってきた。後はその全てを一瞬に託すだけだ。
会場に着き、指定された席に座ると、僕は鞄から時計を取り出し、祈りを込めて額に当てた。
これが最後だから、その力を貸してくれ。これが、最後だから。
僕は一つの決めごとをしていた。それは大学合格と共に、この時計を手放すことだ。



