「あのね、お父さんとも話合ったんだけど、国立一本に絞らないで、万が一のときのためにも、私立を視野に入れたらどう? あんたは数学と科学は得意なんだから……」
「何言い出すんだよいまさら。私立の学費を払える金が、この家のどこにあるんだよ」
母親は申しわけなさそうに一度目を伏せ、口を開いた。
「お金のことは心配いらないの。……おじいちゃんたちが、力を貸してくれるって」
じいちゃんたちが、そんなことを……。
僕は祖父母に感謝するではなく、自らの不甲斐無さを呪った。自分のせいで悪化した両親と祖父母の関係を修復しようと努力を積み重ねてきたはずが、結局はその双方に迷惑を掛けていたのだ。
「俺は国立一本でいく。受験するだけでも金が掛かるんだ、そんな無駄な金は使わせない。じいちゃんたちだって、年金でどうにか暮らしているんだ」
「貯金があるんですって。その一部を……」
「それはじいちゃんたちが老後を楽しむための金だろ。好きな骨董品を買ったり、ばあちゃんと旅行に行ったりするための金だ。そんな金は使わせない。あと半年あるんだ、寝る時間を削ってでも、合格ラインまでもってく」
大丈夫、僕には時計がある。時計の力を使えば寝る時間などいくらでも削れる。
そう信じていた僕は、時計の能力を過信していたのだろうか。
「何言い出すんだよいまさら。私立の学費を払える金が、この家のどこにあるんだよ」
母親は申しわけなさそうに一度目を伏せ、口を開いた。
「お金のことは心配いらないの。……おじいちゃんたちが、力を貸してくれるって」
じいちゃんたちが、そんなことを……。
僕は祖父母に感謝するではなく、自らの不甲斐無さを呪った。自分のせいで悪化した両親と祖父母の関係を修復しようと努力を積み重ねてきたはずが、結局はその双方に迷惑を掛けていたのだ。
「俺は国立一本でいく。受験するだけでも金が掛かるんだ、そんな無駄な金は使わせない。じいちゃんたちだって、年金でどうにか暮らしているんだ」
「貯金があるんですって。その一部を……」
「それはじいちゃんたちが老後を楽しむための金だろ。好きな骨董品を買ったり、ばあちゃんと旅行に行ったりするための金だ。そんな金は使わせない。あと半年あるんだ、寝る時間を削ってでも、合格ラインまでもってく」
大丈夫、僕には時計がある。時計の力を使えば寝る時間などいくらでも削れる。
そう信じていた僕は、時計の能力を過信していたのだろうか。



