Time is gone

「勉強中……よね?」
 そのやけによそよそしい態度から、面倒なことが起こる、と直感した。
「いや、来週の予定を立ててた」
 そう……、母親はホッとしたように呟き、一つのコップを僕の机に置き、もう一つを自ら手に持ち、ベッドに腰を下ろした。
「ちょっと休憩しましょ」
 そんなヒマはない、そう言えばよかったのだが、意思とは関係なく頷いていた。
 思えば、こうして面と向かい合ったのは、いつ以来だろう……。
 もちろんもう一人の僕は、毎日顔を合わせているのだが。
「ねぇっ、最近成績はどう?」
 そんなことは模試の結果を見て分かっているはずだ。改めて確認することでもない。そう思いながらも、僕は素直に答えていた。久々に誰かと、まともに話をしたかったのかもしれない。
「○○大の理工学部に、運がよければって感じ。やっと全盛期を取り戻したかな」
 そうよね、そう言って母親は黙った。
 時計の力により、僕の成績は梅雨を迎えた頃から伸び始めた。そしてやっと全盛期のそれを取り戻すことができた。だが油断が許されるような成績ではない。第一志望の合格率は、先日の模試でも半分にも満たなかった。