桜が散り、ゴールデンウィークが過ぎ、梅雨が終わり、夏が来た。そして迎えた超大型連休夏休み。その与えられた自由な時間をどれだけ有効利用できるか、それによって今後は大きく左右される。多くの受験生がそうするように、僕もまた、学校の補習授業に塾の特別レッスンと、その身を削った。僕らにとって、海水浴や夏祭り、花火大会などといった、夏の醍醐味を謳歌する余裕はない。一つでも多くの公式を叩き込み、英単語を目に焼き付けるしかないのだ。
「光彦、入ってもいい?」
自室のドアをノックしたのは、母親の景子だった。丁度、一週間分の記憶を整理し終え、新たな一週間の予定を立てているところだった。
「どうぞ」
久しぶりに鼓膜を揺らした自らの声は、記憶のそれよりも随分と疲弊していた。精神的には一瞬のできごとであっても、その体は一日一日を着実に消化してきたのだ。
ガチャリ、という無機質な音と共に姿を見せた母親は、二つのコップが乗ったトレーを手にしていた。
「光彦、入ってもいい?」
自室のドアをノックしたのは、母親の景子だった。丁度、一週間分の記憶を整理し終え、新たな一週間の予定を立てているところだった。
「どうぞ」
久しぶりに鼓膜を揺らした自らの声は、記憶のそれよりも随分と疲弊していた。精神的には一瞬のできごとであっても、その体は一日一日を着実に消化してきたのだ。
ガチャリ、という無機質な音と共に姿を見せた母親は、二つのコップが乗ったトレーを手にしていた。



