Time is gone

 恐る恐るそのメールを開き、途端に拍子抜けした。
「何だよ、メアド変わりました、かよ。ビビらせやがって……」
 その見知らぬメールアドレスが、あの男からのものではないかと恐れていたのだ。俺は胸を撫で下ろし、もう一通のメールを開いた。
『しんくん、帰りが遅いぞ! 給料日だからって飲んでいるんでしょ? メールの一通くらいしなさい! 明日は十一時にお台場でいい?』
 それは雪菜からのものだった。彼女とは付き合いだしてもうすぐ一年になる。明日は週末恒例のデートだ。どうしても帰らなくてはいけなかった理由が、それだ。
 彼女とはいずれ結婚を……、と考えていた。特段、人目を引くような華やかさも、可愛らしさもない。スタイルだって一般的だろう。性格も可もなければ不可もない。家庭的で面倒見のいいところが取り柄だ。生涯を共にするには最適な相手だ。
 偉そうな評価を下しているが、俺自信、至って普通だ。身長は百七十センチそこそこ、最近貫禄を付け始めたビール腹が悩み。営業職を生業としているが、野心も将来への展望もない。安定、その二文字を望む堅実な性格が取り柄。
 二人はどこにでもいる、バランスの取れたカップルだった。
 俺はそれぞれのメールに適当に返事を返し、風呂場へと向かった。