僕の豹変ぶりを見た剛は、「気味が悪い」とはやし立てた。
散々余計な世話をやいてきたくせに、それはあんまりだろ……。
僕は内心でそう愚痴った。そんな剛も最近では、「ようやく昔のお前に戻ったな」と、親友の社会復帰を喜んでくれていた。
両親に関しても同じようなものだ。最初は腫れ物に触れるように人の顔色を窺っていたが、最近は元の親子関係を取り戻しつつあった。彼らからすれば、少し遅れてやってきた一人息子の反抗期に、戸惑っていたのかもしれない。
高二の冬にもなって初めての反抗期とは……、我ながら情けない話だ。父親のリストラ、その一件がなければ、僕は一生、両親の純朴なるモルモットと化していたかもしれない。それが幸か不幸かは、誰も知る由がない。
真面目に勉学に励む、その代償として僕は、釣竿を握ることと、祖父母の家に入り浸ることを犠牲にした。この一ヶ月間、一度も釣竿は握っていない。祖父母の家を訪ねたのも、年始の挨拶に行った一度きりだ。
両親と祖父母の関係は未だにピリピリしている。それに拍車を掛けたのは、紛れもなく僕自身だ。その冷戦状態を解消するには、何が何でも大学に受からなければならない。
失った安息の地、時間。見えないプレッシャーに責任感。それらが結果的にどんな結末をもたらすか、僕に知る由はなかった。そして両親、祖父母、親友の剛、その誰もが。



