Time is gone

「行きたくないとこに無理やり行かせて、やりたくないことをやらせる、それが親のすることかね? わしらの時代は……」
「お義父さんたちの時代とは違うの! 行きたくなくても、やりたくなくても、やらなくてはならないんです! いい大学に入って、いい会社に就職して、安定した収入を得てもらいたいんです。それが、親心でしょ……」
 この人は五十にもなって、夫がリストラされて、それでも安定なんてものが存在すると信じているのか……。
 僕はそんな母親を憐れんだ。息子に同情される母親の背中を、その夫が擦っている。
 こいつは一番先に、安定なんてものは存在しない、そんなものは幻想だ! そう叫ぶべきなのだ。それなのに、まだそんなものが存在すると思っているのか。
 僕の中から、父親の威厳と言うものが急速に損なわれた。