Time is gone



 川の流れを眺めていた。釣糸は垂らしていない。これ以上余計なものが釣れては困るからだ。この時計を警察に届けるべきか否か、それを考えていた。だが、「これが犯人の供述している時計だと思います」そう言って届けたとしても、「バカにするな」と一喝されて終わるのが落ちだ。相手にされても困る。これ以上、面倒なことに巻き込まれたくはない。
 ではどうするべきか、再び川に戻すべきか……、それが一番だ。触らぬ神に祟りなし。このまま曰く付きの時計を所持していれば、僕の人生も狂わされてしまう。これ以上脱線すれば、取り返しがつかなくなる。
 分かっていても、〈もったいない〉という感情が心の片隅にあり、僕を惑わした。どんな曰く付きであろうとも、時を自由に進められるという奇跡の時計を手にしたのだ。それを見す見す手放すことは、日本人のもったいない精神に反する。