Time is gone

 その真意を確かめるすべはない。次の駅で降り、新宿に戻ることはできても、あの男がいる保障はない。それに引き返せば、家に帰れなくなる。明日のことを考えれば、それだけは避けたかった。
 大丈夫、あの男の目的が何であれ、この大都会で再び会うことはない。それにこれだけ人がいれば、誰が盗んだかなんて分かるはずがない。目があった気がしたのは、罪悪感からだ。あの笑みは、終電を逃しことに対する開き直りのそれだ。
 俺は都合のいい解釈を並べた。
 電車は暗闇の中を走りぬけて行く。ここ数年、通勤のために毎日利用している。行先は分かっている。レールも一本だ。それなのになぜか今夜は、見知らぬ地へと向かう夜行列車に揺られているようだった。
 ――この暗闇の先には、俺の知らない世界が待っている。
 なぜかそんな気がした。