更衣室には既に井川さんがいた。
「疲れた?」
笑顔の井川さん。
「少し……。でも初日だったからアッと言う間に時間が経ちました」
「そう」
私は自分のロッカーを開けて、脱いだ制服をハンガーにかけた。
「有坂さん?」
「はい」
「携帯の番号教えてくれない?」
井川さんが携帯を弄りながら言った。
「えっ?」
いくらバイト仲間とは言え初対面に等しい彼に教えても大丈夫なの?
「勘違いしてる?」
「はい?」
「バイト仲間としてだよ。シフトの変更とかバイト関係で連絡する時もあるから。もし俺以外の人と組んだ時に、その人にも聞いといた方がいいよ。それに俺、彼女いるから安心して?」
あぁ。
何だ、そういうことか……。
妙に納得してしまった。
「いいですよ」
私は携帯の電源を入れる。
そして赤外線でお互いの番号を交換し合った。
「じゃ、お疲れ」
「お疲れ様です」
井川さんは携帯番号を交換し終わったら更衣室を出て行った。