「あの……他のメンバーやスタッフの方は?」
「ん?帰ったよ」
「えっ?あ、ゴメンなさい……。私のせいで……」
「舞ちゃんのせいじゃないよ」
細野さんがそう言って微笑む。
「スタジオを出たら……」
私はそう言って、ソファーに座り直した。
「男性が喧嘩してる声が聞こえて……」
スタジオを出た時の記憶を辿る。
でも思い出したら……またあの恐怖が甦ってくる……。
太一とリンクする。
心臓の鼓動が早くなる。
目から涙が溢れ出す。
「何も言わなくていい。何も思い出さなくていい。舞ちゃんが落ち着くまで俺が傍にいるから。なっ?」
細野さんが私の前にしゃがむと、俯いた私の顔を覗き込むように優しく言った。
私は泣きながら無言で頷いた。
細野さんは私が泣き止むまで傍にいて、ずっと背中を優しく擦ってくれていた。