私は今、細野さんに教えてもらったスタジオの前に立っている。
伯父さんの家で晩ご飯を食べて「友達の家に遊びに行く」と言って出て来た。
コンビニで買った袋いっぱいのミネラルウォーターを手に持って。
ここからどうすればいいんだろうか……。
スタジオの入り口前で突っ立ってる私。
そこへ1人の男性が私に声をかけてきた。
「ここに何か用?」
洗いたてのようなサラサラの長めの金髪。
メガネをかけてる男性は優しい笑顔を私に見せた。
ここの関係者なんだろうか?
それとも……この男性もアーティスト?
「あ、あの……ラクテの細野さんが……」
その後、何て言っていいのかわからなくて、もしかしたら迷惑なファンだと思われてるかもしれないと思うと顔がだんだん下を向いていった。
「あっ!もかして、細野とメールしてた子?」
俯いてる私の顔を覗き込むようにして男性が言った。
「えっ?あ、はい……」
「俺、ラクテのギターしてる吉形」
「あ……」
私は顔を上げて彼を見た。
「俺について来て?」
「あっ、はい」
私は吉形さんの後ろをついて歩いた。