「俺、好きなヤツがいるんだよ……。お前らと同じくらい大切でなヤツなんだよ……」
健さんがそう言っても、皆、騒ぐことなく黙って健さんの話を聞いている。
「そいつとの出会いは去年の夏で、俺の一目惚れ」
健さんがギターに目を落としたまま言った後、クスッと笑った。
「いつだったか、週刊誌に写真が載ったろ?
あの女とは違うから。ホント、いい迷惑だよな。
俺の好きなヤツは、何て言うかな……。
純粋で可愛くて、俺にとっては天使みたいな存在なんだよ」
健さんの言葉に会場に笑いが起こる。
でもまた、すぐに静かになった。
天使って……。
それは言い過ぎだと思うけど……。