ツアーが始まった。


私はステージの裾から健さんを見ていた。


次で最後の曲だ。


会場も凄く盛り上がっている。

でも……。



「あのさぁ……。話があるんだけど、聞いてくんねぇかなぁ?」



健さんは客席に向かってそう言った。



「俺にとって、お前らは大切な存在なんだよ。

だからさぁ、お前らに黙っておくことが出来なくてな。

俺がこれから話すことを最後まで黙って聞いて欲しいんだ。

俺に何か言いたいヤツがいたら、話を最後まで聞いてから言ってくれ」



まさか……。


私たちのことをファンに報告するの?


私は手を組んで祈るような思いで健さんを見ていた。


隣にいた堀川さんが私の肩をポンポンって叩く。


堀川さんの顔を見ると「大丈夫」と小さく言って微笑んだ。