【完全版】このいっぱいのLove Songをキミに捧ぐ





「旦那に泣きながら訴えたわ。絶対に生みたい。子供を殺すことなんて私には出来ないって……。別れる覚悟で、未婚の母になるのを覚悟でそう訴えたの。そしたらね、あの人、また大きな溜め息ついてね……」



美香さんはそこまで言うと、紅茶を一口飲んで“ふぅ”と息を吐き出した。



「お前が妊娠したのは俺の責任だから、子供は生めばいい。結婚もしてやるって言ったの。随分、偉そうで上から目線でしょ?」



美香さんはそう言ってクスクス笑う。



「妊娠中に病院にも1回もついて来たことなかったし、お腹が大きな私を気遣うこともなくて、結婚したのに独身のように遊び回ってね……。陣痛が来ても1人で病院に行って、1人で産んで……」


「その時、堀川さんは?」


「飲みに行ってた。しかも携帯の電源を切ってたから、看護師さんも連絡が取れないって困ってたわ」


「そうなんですか……」


「でもね、退院する前日に突然、病院に来てね」


「えっ?」


「凄く仏頂面で、朝まで飲んでたのか髪はボサボサで、無精髭は生えてるし、少し酒臭かったけど、来てくれたことが凄く嬉しかったんだ」



そう話す美香さんは本当に嬉しそう。


堀川さんと美香さんのご両親も亡くなってるって健さんが前に話してくれたことがあった。


私も両親がいないけど、伯父さんと義伯母さんがいる。


でも美香さんは頼る人は堀川さんしかいなくて、1人で出産して凄く心細かったと思う。


だから堀川さんが、仏頂面でも、どんな格好でも来てくれたことが嬉しかったんだね。