「ちょっとアンタねぇ、うちの可愛い蒼太がバイバイしてるのに、笑顔でバイバイ出来ないわけ?」


「子供が苦手だから仕方ねぇだろ?」


「もぅ!早く子供嫌いを克服しなさいよ!」


「わかってるよ!早く帰れよ!」


「言われなくても帰りますぅ!」


「ったく、何しに来たんだよ……」


「買い物のついでに寄っただけ」



美香さんはそう言って、健さんにベーと舌を出した。



「舞ちゃん、またね」


「はい」



美香さんと蒼太くんはリビングを出て行った。



「はぁ……」



溜め息をつく健さん。


そんな健さんを見て堀川さんはクスクス笑っていた。



「美香と蒼太が来たら、いつもあんな感じだから……」



そう私に教えてくれた堀川さんは自分のオフィステーブルに戻った。


健さんって、子供が苦手ってより嫌いなんだ……。



「舞?そろそろ帰ろっか?」



健さんはそう言って、ソファから立ち上がった。



「あ、うん……」



私もソファから立ち上がる。



「堀川、帰るわ」


「あぁ」


「お邪魔しました」


「また、いつでも来てね」



堀川さんの笑顔に見送られ、健さんと私は事務所を後にした。