太一の部屋の前。


呼び鈴を鳴らすと、中から「開いてるよ」と太一の声が聞こえた。


小さく深呼吸をして玄関のドアを開けた。


部屋に入ると、ベッドにもたれ掛かり雑誌を読んでいる太一がいた。


私が部屋に入ったことに気づいて太一が顔を上げて私を見た。



「腹減ってんだけど……」


「何か作ろうか?」


「頼むよ」



太一はそう言って、また視線を雑誌に落とした。


私は鞄を部屋の角に置くとキッチンで、お昼ご飯の用意を始めた。