「あの、井川さん……もう、いいから……頭を上げて下さい……」



私の言葉に、ゆっくり頭を上げる井川さん。



「ゴメン……本当にゴメンなさい……」


「ううん。井川さん、ありがとう……」



私は井川さんに微笑んだ。


なぜか井川さんを責める気にはなれなかった。


逆に謝ってくれたことが嬉しかった。


井川さんだって被害者だ。


太一に騙されていたんだから……。


井川さんは何も悪くない。


悪いのは、あの男だ。


私は井川さんに「もう、何も気にしないで下さい」と言って、最後の挨拶をした後、更衣室を出た。