「それで俺、いいよって言ってしまったんだ……。有坂さんの有無を聞かずに勝手に……。アイツには自分が店に行くまで黙ってて欲しいって言われるし……」



井川さんは、そこまで話すと、パイプ椅子に崩れるように座った。



「あの時、有坂さんが帰った後に携帯番号を聞かれた時、そんなに有坂さんを気に入ったんだったらって、番号を教えてしまって……」



井川さんは頭を抱え、髪の毛をグチャグチャ掻き回しながらそう言った後、椅子から体を離し、床に膝を付いて、四つん這いの格好になった。



「俺、何も知らなかったんだ……。有坂さんとアイツが付き合ってたことも、アイツの元カノが有坂さんだったってことも……何も知らなくて……」



うなだれた井川さんの目から涙がポタポタと床に落ちていく。



「店長に聞いて初めて知ったんだ……。でも何も知らなかったとは言え、俺は有坂さんに対して、とんでもないことをしてしまって……。謝っても許してもらえないかもしれない……でも……有坂さん……」



井川さんが頭を上げる。


いっぱい涙を溜め、真っ赤に腫らした目で私を見てる。



「ゴメン……。本当に申し訳ないことをしました……ゴメンなさい……」



井川さんはそう言うと、私に土下座をしてきた。


床に頭をこすりつけるように土下座をする井川さん。