「舞?」
後ろから名前を呼ばれた。
その人物の声を聞いた時、私の背中が強張る。
「舞?」
再び名前を呼ばれた時、肩がビンクと跳ねた。
ゆっくり振り返ると……。
「…………っ!?」
私から少し離れた場所に太一が笑顔で立っていた。
何で太一がいるの?
いつからいたの?
健さんの車から降りた時、車を見送った時、全く気付かなかった。
「舞に会いたかったから来ちゃった」
太一はそう言ってクスッと笑った。
逃げようと思っても金縛りにあったかのように体が動かない。
声も出せず、私は首を左右に振った。
「舞がいけないんだよ?俺のこと避けるし、他の男と付き合うし……。何で?舞には俺がいるのに……」
太一はそう言いながら、ゆっくりゆっくり私に近付いてくる。
私は鉛のように重たい足を1歩ずつ後ろに下げていった。