「俺さぁ……怖いんだ……」



そう言った健さんは急に切ない目をした。



「怖い?」


「あぁ。可愛い彼女がいて、仕事も順調で、良い仲間にも恵まれて……。幸せ過ぎて怖いんだ……。いつか、この幸せも崩れ落ちていくんじゃないかって……。本当は夢で、目覚めたら誰もいなくて、本当の俺は1人ぼっちなんじゃないかって……」


「大丈夫だよ。これは夢じゃないよ。私はどこにも行かない……。ずっと健さんの傍にいるよ……」



そう言って、私は健さんにギュッとしがみついた。


だから、ねぇ、健さん?


もう、そんなこと言わないで?


私は健さんとずっと一緒だよ。


でも、この時の私は知らなかったんだ……。


健さんとの別れが刻々と近付いていることを――……。