周りからの「中身を見せろ」という言葉に、健さんが箱を開ける。
シルバーで、ドクロとクロスがデザインされ、裏にはローマ字で“Takeru”と名前を彫ってもらったZippo。
私の中のロックバンドの勝手なイメージがドクロとクロスで、その柄がモチーフで、高校生の自分でも買える範囲内のものを買った。
「藤田くん?」
健さんがスタッフの1人を呼んだ。
藤田さんは、いつもスタジオにいるスタッフの1人で、私をバイト先まで送り迎えしてくれる人。
スタッフの中でも1番若いんじゃないかな?
「何っすか?」
「これ、藤田くんにあげる」
健さんは自分が持っていたZippoを藤田さんに渡した。
「えっ?い、いいんですか?これ、クロムハーツですよ?」
クロムハーツ?
それって高いの?