「ゴメンなさい……」
頭がガンガンと激しく痛くなり、吐き気もする。
動悸に目眩……。
このままだと倒れてしまうかもしれない。
この男の前から一刻も早く逃げろと脳から命令が下る。
私はフラフラする足でレジから出た。
「有坂さん、大丈夫?」
背中に聞こえる井川さんの声。
「帰って寝れば大丈夫なので」
私は井川さんの方を見ることなくそう答えた。
男の前を通り過ぎ、店長がいる裏の事務所に行こうとした時……。
「………………っ!?」
男に腕を掴まれた。
恐る恐る男の方を向く。
「大丈夫?送って行こうか?」
相変わらず満面の笑みでそう言う男。
私は首を左右に振った。
「離して、下さい」
男だけに聞こえるようにそう言うと、男の顔から笑みが消える。
そして……。
「井川に、余計なこと言うんじゃねぇぞ?」
ドスの効いた小さな声でそう言って私の腕を掴んでいた手を離した。
笑顔の下に隠された悪魔の顔。
私の目の前にいる男……。
元彼の太一という男はそういう男だった――……。



