蘇る恐怖。
ドクドクと激しく鳴る心臓。
額に出る冷や汗。
満面の笑みの下に隠された悪魔の顔。
「……さん?有坂さん?聞いてる?」
そう言った井川さんが私の肩をポンと叩いた。
「や、やめて!」
「有坂さん?どうしたの?」
ここがバイト先じゃなかったら大声で叫んでいたかもしれない。
井川さんの呑気な口調に腹が立ってきた。
レジから真正面に見える時計に目をやる。
バイト終了まで、あと30分。
「あ、あの……急に体調が悪くなって……ゴメンなさい。早退、させてもらってもいいですか?」
「えっ?大丈夫?」
さっきまで笑顔だった井川さんの顔は心配そうな顔に変わった。



