「あ、変なこと聞いてゴメンね……」



私が、なかなか彼氏の有無を言わなかったからだろう。


井川さんは苦笑いしながらそう言った。



「いえ……」



私も苦笑いしながらそう言った。



「実はさぁ……俺の友達で彼女がいないヤツがいて、俺に女を紹介しろって煩いんだよ。で、バイト先に可愛い子がいるって言ったらさぁ……」



その可愛い子って私?


いや、私、可愛くないし……普通だし……。



「そいつ、本気にしちゃって会う気満々なわけで……」


「えっ?…………こ、困ります!」



大声で叫んだもんだから、お客さんがこちらをチラチラ見てるし……。



「えっ?もしかして、有坂さんって彼氏いたの?」


「いや、だから……いるとか、いないとかの問題じゃなくて、そういうことを勝手にされたら困るってことで……」



私は声のトーンを落としてそう言った。



「そっかぁ……」



井川さんはそう言った後、頭をポリポリ掻きながら“困ったなぁ”とポツリと呟いた。


“困ったなぁ”って……それは、こっちのセリフだよ!