「舞?」


「ん?」



心お兄ちゃんに名前を呼ばれ、ドアから手を離して振り返った。



「友達の姉ちゃんに送ってもらったって嘘だろ?」



心お兄ちゃんはニコニコしながらそう聞いてきた。



「えっ?何で?」



一瞬、目が泳ぐ。


何で嘘がバレたんだろう……。



「やっぱりな。舞が嘘をついたことくらいわかるよ。何年、舞と一緒に暮らしてると思ってんだよ」



心お兄ちゃんはそう言ってクスッと笑った。



「今度、俺にも紹介しろよ。なっ?」



紹介しろって……。


何で彼氏に送ってもらったってわかったの?


嘘も見破られて、しかも彼氏に送ってもらったってことまでわかるなんて……。



「うん」



でも私は何も聞かずに、そう返事をして微笑んだ。



「じゃーな、気をつけて帰れよ」



心お兄ちゃんは笑顔でそう言った。


私は心お兄ちゃんの病室を後にした。


笑顔で見送ってくれた心お兄ちゃんが嘘をついてたなんて、この時の私は知る由もなかった――……。