死体のように動かない体。


遠くから聞こえる蝉の鳴き声。


目を薄く開けて、殺風景な部屋の白い天井を見つめていた。


歪んでいく白い天井。


目尻からこぼれ落ちる涙。


このまま死んでしまうのかな……。


暗闇の中をさ迷い、恐怖に怯え、心も体もボロボロで……。


そんな苦しい思いをするなら、このまま死んだ方がマシなのかもしれない。


でも…………。



「舞(マイ)?」



私の名前を呼ぶ優しい声が聞こえる。


動かない体を必死に動かそうとする。



「舞?」


「あ……」



そう声を出すのがやっとだった。


私の顔を上から覗き込む男。


さっきまでの悪魔のようだった面影はない。


私の顔を上から覗き込む彼は切ない目をしていた。


私はいつも、この目に騙されてしまう。


私は彼から逃げることが出来ない……。