健さんに抱きしめられているとわかった。
「大丈夫?」
「ゴメン、なさい……」
健さんは何も言わずに私の体包み、背中を優しく摩ってくれた。
まるで泣いている小さい子供をあやすように。
家にある脱衣所の鏡や部屋の鏡は、服を着ている時にしか見ないようにしていた。
裸では鏡の前に立つことはしなかった。
お風呂場にある鏡にも背を向けて体を洗っていた。
鏡に映る体中の傷や打ち身などを見たくなかったから。
「少しは落ち着いた?」
健さんの言葉にコクンと頷いた。
「ずっと、鏡に自分の裸が映らないように気をつけてのに……。元彼ってね、凄く頭がいい人でね……。顔には絶対に手を出さないの。服で隠れる場所しか手を出さない人で……」
だから、家族も友達も私が太一から暴力を振るわれていたことなんて知らなかったんだ……。
「もう、何も言うな。何も言わなくていいから……。俺が舞の辛い過去を忘れさせてやるから……。言ったろ?俺が舞を守るって……」
健さんはそう言って、私の体を再びギュッと強く抱きしめた。



