【完全版】このいっぱいのLove Songをキミに捧ぐ




脱衣所に入って“バタン”とドアを閉めた。


その途端、口から漏れる小さな溜め息。


ただ、普通のホテルが取れなかったからラブホに来ただけじゃん。


なのに私ったら……。


緊張しちゃって変なの。


自分にそう言い聞かせながら服を脱いでいく。


全て服を脱ぎ終わった時……。


脱衣所にある大きな鏡に自分の姿が映った。


頭の先から足の先まで全身が映る大きな鏡。


自分の裸になった姿を鏡で見たのは初めてに等しかった。


肘から上、膝から上に見える内出血の跡。


腹部や胸部に見える切り傷や打ち身。


それを見た瞬間、脳裏に忘れていた出来事が蘇る。


“ドクン――ドクン――”


大きく胸を打つ鼓動。


苦しくなる呼吸。


太一の暴言、暴力が鮮明に蘇る……。


クラクラする体を支えようと、洗面所に手を掛けた時……。


“ガタンッ”と大きな音をたてて体が崩れていった……。