「……チッ」
健さんの舌打ちが聞こえた。
「どうしたの?」
「どこも満室だって。何で満室なんだよ……ったく……」
「じゃー……帰る?私、明日、電車で行くし……」
「こうなったら最終手段に出るしかねぇのか?」
健さんは私の言った事が聞こえてないのか、独り言のようにそう言った。
最終手段?
それは一体……。
「あのさぁ、舞?」
「ん?」
「ホテルが満室で部屋が取れなかったんだ……」
「うん」
「だから……」
「だから?」
健さんが私の肩を掴んで目をジッと見つめてくる。
な、何?この空気は……。
“ドクン――ドクン――”
何言われるんだろう……。
「だからさ……その……最終手段として……」
「うん」
「…………ラブホで、いいか?」
「………………うん……って、えぇぇぇ!!」
狭い車内で私の叫び声だけが響いていた……。



