あの時、助けてくれた彼のことが頭に浮かんだ。 長めの黒髪。 切れ長の目。 筋の通った鼻。 キリッとした眉毛。 薄くもなく太くもない唇。 真夏なのに黒の長袖Tシャツを着ていて、それから腰で穿いたブラックジーンズ。 首にはシルバーのネックレス。 左耳にはピアス。 服装を見た限りでは、その辺にいるチャラい男たちと変わらない。 でも少年のような笑顔が印象的だった。 困ってる人を見て見ぬフリをする人が多い中、彼は親切に私を助けてくれた。 それに私は彼に対して不思議と恐怖心が全くなかった。