「今日はもう遅いし、また連絡するから帰りなさい。おばあちゃんには私から電話しておくから……」
「うん……」
私は椅子から立ち上がった。
義伯母さんも立ち上がる。
「気をつけて帰りなさいよ」
「うん……」
って、何でだろう……。
何で義伯母さんは……。
「じゃあね」
義伯母さんが私に背を向けて、病室に戻ろうとした。
「あ、義伯母さん!」
「ん?何?」
義伯母さんは足を止めて、こちらを向いた。
「聞かないの?」
「えっ?何を?」
「私が、ここへどうやって来たのか……」
女子高生が遅くに家から遠く離れた病室に1人で来たことを聞かないんだろう……。
「聞いて欲しかった?」
義伯母さんはクスッと笑った。
「い、いや……そういうわけじゃ……」
「舞ちゃんから何か言ってくるまで、おばさんは何も聞かないわ。もちろん、おじさんにも内緒にしとく」
「…………うん」
義伯母さんは笑顔でそう言うと、病室の方へ行ってしまった。
義伯母さんは、わかってたのかもしれない……。
いや、わかってたんだ。
でも何も聞かなかったのは、義伯母さんの優しさかもしれない。
“ありがとう――”
私はそう心の中で呟いて、病室を後にした……。