「私ね、バイトしようと思うんだ……」
私がそう切り出したのは晩ご飯の時。
「バイト?」
斜め前に座っている伯父さんがハンバーグを切っていた箸を止めてそう聞いてきた。
「うん」
「何でまた……」
そう言ったのは義伯母さん。
「バイトしたら彼氏と会う時間なくなっちゃうよ?」
と、純お姉ちゃん。
「うん……。実はね、太一もバイト始めたんだ。でね、太一がバイト始めると、あまり会えないから、寂しさを紛らわすために私もバイトしようかなって……」
嘘……。
太一の部屋から帰る時に考えた嘘。
親からの仕送りで生活している太一。
付き合って2年。
太一がバイトをしているとこなんて見たことない。
これからバイトする話も聞いたことない。
私がバイトをする本当の理由……。
それは、太一から少しでも逃れられたら……。
バイトをすれば太一と会わなくて済むと思ったから。



