山岡さんのお店を出た時には外は薄暗くなっていた。
昼間のような蒸し暑さはなく、心地よい風が吹いている。
「舞ちゃん……」
「はい」
車に乗って、エンジンをかけてから細野さんに名前を呼ばれた。
「まだ時間、大丈夫?」
細野さんにそう言われて、車内の時計を見る。
「大丈夫ですよ」
「もう少し付き合ってもらっていいかな?」
「あ、はい……」
細野さんの言葉にドキンと胸が鳴った。
でも私は大丈夫だけど……。
「あ、あの……細野さんは大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫だから舞ちゃんは気にしなくていいよ」
運転席から細野さんの腕が伸びてきて、私の頭をポンポンとしてくれた。
“ドキン――ドキン――”
私の胸は爆発寸前の爆弾のようだ。
「海でも見に行かね?」
「えっ?あ、う、海ですか?い、いいですよ」
慌てる私。
それを見てクスクス笑う細野さん。
凄く恥ずかしくて、今、私の顔は多分、トマトのように真っ赤なんだろうな……。