細野さんはタバコを口に咥え火をつけた。
「なぁ、舞ちゃん?」
タバコの煙りを吐き出し、前を真っ直ぐ見たまま私の名前を呼んだ。
「俺は女に手を挙げる男は最低だと思ってる……」
「うん……」
「彼氏とは別れた方がいいんじゃないかな……」
もし……家族や学校の友達に相談してたら……。
細野さんと同じことを言われてたのかな……。
もし……私が逆の立場で友達が彼氏から暴力を振るわれてたら……。
私も友達に別れをススメるかもしれない……。
「舞ちゃん自身、心のどこかでは別れたいと思ってんじゃない?」
「えっ?」
「でもな、それでも舞ちゃんが彼氏のことを好きなら俺は何も言えない……ってか、何も言わない……」
細野さんはそう言うと、タバコを携帯灰皿に押し付けた。



