家族にも友達にも今まで話せなかった太一の本性。
それを知り合ったばかりの細野さんに話せば楽になるのかな……。
「あの、細野さん……」
「ん?」
「あのね……私……」
細野さんに話そうとした時……。
♪~♪~♪~
鞄の中に入れていた携帯の着信を知らせる着うたが鳴った。
“ビクン”と跳ね上がる体。
強張る顔。
静寂の中で携帯の着信音だけが鳴り響く。
多分、太一だ……。
私は鞄から携帯を出して誰からの着信か確認した。
“太一”
そう表示されてるディスプレイ。
やっぱり……。
「出ないの?」
細野さんが2本目のタバコをボックスから取り出しながら聞いてきた。
「えっ?あ……えっと……」
「出にくかったら離れようか?」
「い、いや……大丈夫です……」
そんなやり取りをしていたら電話は切れてしまった。



