棚からあれこれと机に並べて、勝手に消毒、勝手に手当。

 3限目が終了するまであと10分程度。


 今から校庭に戻るのは面倒くさい。

 先生が戻ってくるまでは居たっていいだろう。


 傷の手当ても終えて特にすることも無くなった俺は、先生の椅子に凭れながら窓から見える中庭へと視線を移した。

 と言っても、中庭にコレと言って見るモノなんて無いんだけど。


 程なくして終業のチャイムが鳴り響く。

 次の授業は英語だったな、とか何とか。

 適当な事を考えながら、そろそろ教室に戻ろうと立ち上がった時だ。


「失礼します」


 控えめな女子の声と同時に保健室の扉が開けられた。


「あ……」


 口を開いたのは俺じゃない。

 俺が居ることに驚いた向こうが小さく声を漏らした。


「結城くん、具合悪いの?」


 にこ、と笑みを浮かべた女子は、去年同じクラスだった沢木さん。

 余り話した事は無いけど、こんな子が彼女だったらいいな、と思う程度には可愛い子だ。