葬儀の後、葬祭場を出ると、泰樹さんがいた。
「明日音ちゃん、来てたんだ」
泰樹さんは目元を真っ赤にして、いかにも泣きはらした顔をわずかにほころばせて、わたしを手招いた。
「泰樹さん……」
母に先に帰ってもらって、泰樹さんと二人で近くの公園にいった。
この公園には―…
バスケットゴールは、ない。
泰樹さんはベンチに腰掛けた。
わたしも隣に座った。
泰樹さんは懐かしそうに笑いながら言った。
「久しぶりだな、公園なんて。高校生のころはよく行ってたんだけどなぁ」
泰樹さんはおじいさんのことを、思いだしているのだろうか
「泰樹さんはおじさんの生徒だったんですね」
「黒松先生は高校の時の担任で部活の顧問だった。僕が高2までだったな、定年退職したんだ」
わたしの知らないおじいさんの一面をこの人は知ってる。
「……はじめて、お葬式に行きました」
話題をかえられたことを気にもとめず、泰樹さんは優しく笑っていた。
「僕は二回目、こんなにたまらない気持ちになるお葬式はね」
「一回目は?」
ちょっとした好奇心だったのかもしれない。けど、少し、後悔した。
「初恋の人が死んだとき」
なんて言うから。


