「どうして?」
「恨んでも、なんも変わんなかったから。もうだいぶ前の事だし」
絵美ちゃんは一拍おいて、付け足した。
「間宮さんは恨むんだ?」
わたしは何も答えられない。
深秋達のことは今でも、どこかで友達だと思ってる。
こんなことになるなんて、実際になるまであり得ないと思ってた、というか、考えもしなかった。
それだけ仲が良かったのだ、あの頃は、本当に。
「いじめっていくつかパターンはあると思うけど、結局、近くにいるから、いじめってあるんだよね」
「えっ…」
「いつも近くにいるから、悪いとこ見つかるし、妬みとか恨みとかできちゃうじゃん」
絵美ちゃんが教えてくれることを、聞き漏らしたくなくて、じっと見つめていた。
「“悪”がないとダメなんだよね。人間、退屈も窮屈も嫌いだから、どっかに“悪”をつくって、自分の捌け口にしたいんだよ。きっと、その“悪”が本当に悪いかなんて関係ない」
絵美ちゃんは何かを吐き出すみたいに続けた。
「近くにいるものほど“悪”にする要素なんていくらでも見つけられるし。自分に全く関係ないものだっていろいろでっち上げて、“悪”にしちゃうくらいだしね」
最後に“人間怖いね”と言って絵美ちゃんは話をしめた。


