絵美ちゃんが初めてくれたから好きになった、なんて、絶対言わない。
死んでも言わない。
絵美ちゃんはふうんと笑って缶を置いた。
それから、また鞄をあさって、別のドロップスの缶を取り出した。
絵美ちゃんはその缶を軽く振って、わたしの手のひらにドロップを落とした。
勢いがつきすぎて、三個も、出てきた。
「はっかだー…」
それも全部。
「言ったじゃん、わたし、はっか嫌いだから」
なんだそれ。
「貯めて、どうするの?」
「和真にあげる」
絵美ちゃんはプイッと横を向いてしまった。
三個いっぺんにはさすがに食べたくなかったから、一つだけ取って、缶に戻した。
「絵美ちゃん、なんでドロップス好きなの?」
何となく聞いただけだったのに、絵美ちゃんはなぜか、しばらく答えなかった。
「和真が、くれたから。リハビリしてる時に、わたしがドロップスの缶を開けれるようになったら、一緒に食べようって言ってくれたから」
それから、懐かしそうにドロップスの缶をカラカラいわせていた。
「ねぇ、絵美ちゃん……絵美ちゃんはいじめてた子達を恨んだりしてない?」
爆弾だった。
自分にとっては。
「別に」
やっぱり、絵美ちゃんの答えは素っ気なかった。


