ふぅっと絵美ちゃんが息を吐く音が聞こえた。


「変わったね、間宮さん。変われるじゃん」


絵美ちゃんの左手がわたしの右の肩を押し上げた。

まだ痙攣しているのが布越しに伝わってくる。

わたしが頭を上げると絵美ちゃんは笑っていた。


「明日は、佳奈にも言わないとね」


「うんー…」


若干、声が詰まった。

鼻がツンとして、痛い。


「あー…ほら、泣くな」


絵美ちゃんは鞄からドロップスを取り出した。

ガラガラと振る缶がぼやけているのは、絵美ちゃんが激しく振るからか、わたしが泣いてるからか。

わたしの手のひらにオレンジ色のドロップが落ちてきた。


「あ、やっぱそれ返して」


絵美ちゃんが急に真面目な顔で言った。


「なんで?」


「それ、一番好きだから」


思わず小さく吹き出して笑ってしまった。


「そうなんだ、オレンジ好きなの?」


「飴の中ではオレンジかミカンが一番おいしいでしょ?」


真顔で言われてまた笑ってしまった。

わたしが絵美ちゃんにオレンジのドロップを渡すと、絵美ちゃんは、もう一度缶を振った。


「間宮さん、何が一番好き?」


なんだろう。

イチゴも好きだし、メロンも好きだし、もちろんオレンジも好きだけど、
やっぱり―…



「はっか」