「絵美ちゃんってさ……和真くんのこと、好き?」


絵美ちゃんに迷いはなかった。


「好き」


「どういう意味で?」


「人として、好き。間宮さんが思っているのとは違うよ、多分」


この時、絵美ちゃんが向けてくれた笑顔は今までで最高のものだったかもしれない。


「間宮さん、和真って、利き手どっちか知ってる?」


唐突な質問だった。

もちろん、和真くん利き手なんて知らない。

でも和真くんは絵美ちゃんのいとこだし、

絵美ちゃんは左利きだから……


「……左?」



「両利きなんだ、和真は」


絵美ちゃんは自分の左手を右手で包むように握った。


「和真はさ、いとこだし、いいやつだって思うし、けど、簡単に言葉で言っちゃえる関係じゃないと思う」


わたしが小さく相づちを入れると、絵美ちゃんは続けた。


「左手壊した時、けっこう諦めてて、そしたら和真が俺も一緒に頑張るからリハビリしようって言ってくれた。
何言ってんだかって思ってたら、ホントに自分も必要ないのに、リハビリやってた。
リハビリしても、完全には治らないってわかってからは右手使えるように訓練するのも一緒にやってくれて、
だから、
そう、和真は特別」


そうか―…それで両利きなんだ。


「すごいね、優しいね、和真くん」


「バカでしょ?」