絵美ちゃんに話しかけた。


「今から暇なら、話がしたい」


学校で絵美ちゃんから話しかけてくるのは初めてだ。


「うん」


それだけで通じた。

あとはお互い何も言わないで、わたしは絵美ちゃんの3メートルくらい後ろを歩きながら公園までいった。

久しぶりに絵美ちゃんと二人きりになれた。

絵美ちゃんは松葉杖でも歩くのが速い。

二人で並んでブランコに座った。

絵美ちゃんは一息ついてから言った。


「奈都から、聞いたでしょ?」


「うん」
「左利きなんだよね」


「そう」


会話はゆっくり進んでいく。

お互いの距離を図るみたいに。


「絵美ちゃん……足、どうしたの」


わたしは自分からもやもやの核心をついた。


「だいたいわかってるんでしょ?」


絵美ちゃんは意地悪な笑みを浮かべた。


「……わたしのせい?」


「なんでそうなるかな…」


絵美ちゃんは呆れていた。


「あんたがやった訳じゃないでしょ」


「それはそうだけど…深秋達なんでしょ?」


「わかってるんならいいじゃん」


やっぱり絵美ちゃんは絵美ちゃんだった。


「まだ、痛いの?」


「あー…そんなに。触んなきゃね」


聞きたいことばかりで何から聞いたらいいかわからない。

話がしたいって言ったくせに、絵美ちゃんは話を振ることをしない。