「左の手首に、ガラスの欠片が刺さったんだ。神経に深く傷がついて、それで、バスケをやめた」
わたしは少し考えた。
絵美ちゃんは右利きだ。
バスケしたときも、授業中も、お箸も、全部右手だった。
「右利きなら……左手は」
奈都くんはわたしの言葉を遮った。
「松藤は、左利きだよ」
「もともと左利きなんだ」
「なんで―…」
「松藤、ほんとは左手も使えないわけじゃないんだ。ただ、たまに、動かなくなるらしくてさ……」
―…右手も、使えるようにしたんだ。
知らなかった。
なんで教えてくれなかったの、絵美ちゃん?
そんな大変こと、教えて欲しかったよ。
ボールを落とした時の絵美ちゃんはどんな顔してた?
知ってたら……バスケしようなんて言わなかったのに。
わたしは奈都くんをじっと見つめて、肩の力を抜いた。
「ねぇ、ちょっと話変わるけど、絵美ちゃん、足、やっぱり深秋達にやられたのかな」
奈都くんは複雑な顔をしていた。
違うよ
―とは言ってくれなかった。
「そう、みたいだな」
「わたしのせいかな……」
奈都くんは何も言わない。
「わたしと一緒にいたからかな」
声まで自分の震えがつたう。
「わかんねえ、けどさ、俺は多分、そうだと思う」
奈都くんはため息をついて、立ち上がった。


