「俺、どうしよう。怒るよな」

「奈都、君は彼女の気持ちより自分のほうが大事なのかい?」

「……。」

広瀬くんは黙ってしまった。

わたしはその場にいるのがたまらなくなって、本棚を離れた。


涙が、止まらない。

何で泣いてるのかもわからないくらい、いろんな気持ちがせりあがってくる。

早くここから離れたい。
ドアについている鐘がなるのも気にせずに店を飛び出した。

広瀬くんが突然なった鐘に驚いた声をあげたのがわかった。


「奈都、それはあなたが悪いね」


おじいさんの小さなつぶやきは聞こえなかった。