「絵美ちゃん、バスケうまいね…」

ブランコに座って絵美ちゃんと並んだ。

絵美ちゃんは黙って地面を蹴っていた。

絵美ちゃんのブランコが小さく揺れている。

「バスケやってたの?」

「少しね。あとはお兄ちゃん」

そういえば去年のバスケ部の先輩に松藤先輩という先輩がいたことを思い出した。

「真司先輩…のこと?」

「うん」

絵美ちゃんによく似ていて顔立ちの整った先輩だった。

物静かでいつもニコニコ笑っていて、誰よりも熱心に練習していた。

誰よりもバスケがうまかった。

「かっこいいよね、真司先輩」

「外面いいからね、あの人は」

絵美ちゃんは一度もこっちを見てくれない。

「下手だね、間宮さん」

「ほんとに下手」

淡々と言う絵美ちゃんの言葉はすんなり胸に落ちてきた。

「部活、行ってないでしょ」

「うん」

「逃げたんだ?」

「うん」

だんだん悲しくなって、視界が滲んできた。

絵美ちゃんからはそれ以上何も言ってこなかった。

「…絵美ちゃん、教室で1人で寂しくない?」

「別に」

「…悪いけど、絵美ちゃん冷たいよ。知ってるでしょ?わたしみんなにいじめられてるんだよ?」

「慰めてほしいんだ?」

絵美ちゃんは少し怒ったみたいな声で言った。

わたしは何も言えなくなって、黙って地面をにらみつけた。