「みー兄」


リビングに戻ると、美優が手を伸ばして俺に抱っこをせがむ。


みー兄、みー兄って昔から俺の後ろをくっついてきた美優。


俺の名前は湊(みなと)だけど、小さいころからずっと美優はなぜかみー兄って呼んでる。


きっと幼い美優には、湊の発音は難しかったんだろう。


美優を横抱きにし、そのままソファーに座る。


「美優、高校からそのままここに来たのか?」


「ううん。一回家に帰ったよ」


ギュッと俺に抱きついてくる。


普段の美優はしっかりした子で、こんな風には甘えてこない。


甘えてくるのは、心が弱ってる証拠。


美優は、名前の通り優しい子で、すごく繊細な子。


人の心に、敏感に反応する。


「美優、何か食べたか?」


「欲しくない」