美優がこうして俺の部屋の前で座り込んでいたことは、今回が初めてではない。


「美優、着替えるか?」


俺の声に、美優の頭がこくんと動く。


そっとソファーに下ろし、寝室に置いてある美優の着替えを持っていく。


ついでに制服を掛ける用のハンガーも。


「みー兄」


不安そうな顔をする美優の頭をなでて、自分も着替えをするために寝室に戻った。


「はぁ~」


着替えと共に出るため息。


大学を卒業したと同時に、俺はこのマンションに引っ越してきた。


その前までは実家暮らしで、美優の家とも隣同士。


その時から、いやもっと前から、美優の家は不安定だった。


つまり、親同士のケンカ。


今は、離婚にまで話が発展しているらしい。


そんな状況で、美優は、助けを求めるように俺のところに逃げてくる。