「なに、してるの?」 私の質問に内宮君は完璧なまでの笑顔で答えを言い放つ。 「現実逃避」 思いがけない返答。 風だけが吹き抜ける。 「…え?」 遅れぎみの反応に内宮君は少し笑って立ち上がった。 「嘘だよ」 掴めない。 この人の意図が解らない。 「掴めないって?」 「えっ、口に出てた!?」 「ううん、直感」 嵌められた。 頭をガシガシ掻きむしりたい気分。 「長田さんって面白いね」 "王子様"はそう微笑んで屋上から出ていった。